あんな
たかく
新横浜駅と横浜駅は電車で12分の距離にある別の駅です。
ところがきっぷの取扱い上で、この2駅を同一視できる場合があります。どのような場合に同一視できて、どのような場合に区別しなければいけないのかを詳しく解説します。
もくじ
新横浜と横浜は別の駅
東海道新幹線は東海道本線のバイパスとして作られましたから、この2つを同じ線路とみなすことがあります。ところが、新横浜駅と横浜駅は物理的に離れた場所にありますので、同一視するのは無理があります。
運賃計算に使う営業キロは新幹線と並行在来線で全く一致するように設定されています。このため、在来線でも新幹線でも運賃部分は全く同額です(品川~新横浜間など、例外はあります)。
このことから新横浜と横浜が同一視できると言うこともできますが、あくまで運賃が同額の別の駅という扱いです。新横浜に対応する在来線の駅が横浜、くらいの言い回しが適切です。
新横浜と横浜が同一駅とみなせるのはなぜか
とはいえ、きっぷの効力の点から同一視できる場合があることは事実です。この問題はちょっと複雑なので、基本から説明します。
新幹線と並行在来線の関係
東海道新幹線と東海道本線は全区間で並行しています。
きっぷを作るときは乗車する経路を指定しないといけませんが、似たような経路の路線が複数ある場合は、売る側も買う側も面倒です。そこで、新幹線は並行する在来線と同じ線路とみなしてきっぷを販売しています。
具体的には東京~静岡間の新幹線の乗車券と、東京~静岡間の在来線の乗車券は効力が同じだとみなします。
同一視する区間と、別線扱いする区間がある
ところが、新横浜のように、在来線と新幹線で別の駅を通るところでは、同じ線路とみなすことには無理があります。そこで、新幹線単独駅を含む区間に限っては別の線路とみなします。この意味では新横浜と横浜は別の駅です。
旅客営業規則 第16条の2
次の各号の左欄に掲げる線区と当該右欄に掲げる線区とは、同一の線路としての取扱いをする。
(1) 東海道本線、山陽本線中神戸・新下関間 東海道本線(新幹線)及び山陽本線(新幹線)中新神戸・新下関間 (以下略) 2 前項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる区間内の駅(品川、小田原、三島、静岡、(中略)の各駅を除く。)を発駅若しくは着駅又は接続駅とする場合は、線路が異なるものとして旅客の取扱いをする。
(1)品川・小田原間
(2)三島・静岡間(以下略)
接続駅とする、というのは、たとえば横浜から桜木町方面に乗り換えたりするときの横浜駅のことを言います。
別線扱いでも経路があとから選べる
そして、別の線路とみなしておきながら、乗車経路を自由に選ぶことができる制度があります。これを「選択乗車」といいます。これによって、新横浜~静岡間の乗車券で、横浜~静岡間に乗ることもできます。
このことをわかりやすく言った結果が、新横浜と横浜が同一駅とみなせる、ということなのです。
たかく
選択乗車はルートがいちいち指定されている
選択乗車によって、新幹線と在来線が自由に選択できるとはいえ、やり方が事細かに決められています。このため、横浜と新横浜が同じ駅とみなせるとは言い切れないのです。これから可能なパターンと不可能なパターンを紹介します。
これから示す図の見方を説明します。緑の区間の駅と、オレンジの区間の駅の間の乗車券を持っている場合、青いルートと赤いルートが選べます。
新幹線に乗らないとき
新幹線に乗らないときは、新横浜と横浜は完全に別の駅です。
品川~小田原間を通るとき
品川~小田原間を通るときは、新幹線と在来線を同一の線路とみなしますので、乗車券の経路にかかわらず、どちらの経路を通っても構いません。
運賃計算においては、両者のルートの営業キロが全く同一に設定されていますので、必ず同額となります。
例えば、川崎~熱海といった区間はこの場合に含みません。
品川~小田原間を乗るときに、全て青いルートを通る乗り方、全て赤いルートを乗る乗り方の2つがあります。その他に、品川~新横浜と横浜~小田原、品川~横浜と新横浜~小田原、というように、互い違いに乗ることも可能です。ただし、横浜~新横浜間を移動するときは別途運賃が必要です(IC:168円、きっぷ:170円)。
この意味では、新横浜と横浜は同じ駅とみなせるといえます。
横浜~新横浜間の各駅と小田原以西の駅のあいだ
もっとも多くの方が利用するパターンとして、新横浜から東海道新幹線の下り方面に乗る場合があります。この場合は新横浜と横浜が同じ駅とみなせます。
親切なことに、横浜線をう回することまでできます。
たとえば、横浜から小田原の間の在来線の乗車券を買えば、新横浜経由で乗ることができます。逆に、新横浜から小田原に向かうときに、新幹線経由の乗車券で、横浜経由の在来線に乗ることもできます。
どちらのルートの乗車券も発売していますが、両者で運賃は異なります。通常は最短経路のものを買います。
横浜~新横浜間では乗車券に書かれていない方の途中駅に途中下車できないので、ルート上で途中下車したい場合は遠回りの乗車券を買うメリットがあります。
東神奈川~小田原間を通るとき
東神奈川と小田原の間を通るときは、全区間在来線の赤いルートと、新横浜から新幹線に乗るルートが選べます。
一見、新横浜と横浜が同一駅とみなせる、と思ってしまいがちですが、赤いルートと青いルートは独立しています。横浜で途中下車してしまうと、新横浜から乗る権利はなくなってしまいます。
乗車券はどちらのルートのものも発売していますが、発売額が異なります。横浜経由のほうが低額となります。あえて新横浜経由で買うメリットはありません。
この場合は、ルートの選択は自由ですが、同じ駅とみなすには無理があります。
分岐駅を通過する列車に乗車する場合の特例|きっぷあれこれ JR東日本
横浜で途中下車したい場合は、この規定を使わずに、横浜~新横浜間を別払いしたほうが安くすみます。
都内方面と横浜周辺のあいだ
品川~新横浜間の新幹線と、品川~横浜間の東海道線は同じ線路とみなさないばかりか、選択乗車をすることもできません。
品川~横浜間と、品川~新横浜間は営業キロが同一に設定されていますが、品川~横浜間に特定運賃が設定されているため、両者で運賃が異なります。
運賃 | ||
---|---|---|
品川~新横浜間 (新幹線) |
420円 | 別途特急料金(870円)が必要 |
品川~横浜間 | きっぷ 300円 IC 293円 |
|
品川~新横浜間 (東神奈川経由) |
きっぷ 480円 IC 473円 |
この意味においては新横浜と横浜は全く別の駅ということになります。
横浜線、根岸線と小田原以西のあいだ
新横浜~小田原間と横浜~小田原間は選択乗車がありますが、出来ない場合もあります。それが横浜線小机方面や、根岸線桜木町方面と乗り継ぎになる場合です。
こういう乗り方をする場合は、新横浜と横浜は全く別の駅と考える必要があります。
まとめ
新横浜と横浜は運賃計算上は別の駅ですが、同額になります。乗車券の効力の観点からは同一視できる場合があります。
ひとことで「新横浜と横浜を同一視できる」と言ってしまうのは楽ですが、できる場合とできない場合を判別するのは大変です。
新幹線と在来線を同一視する裏にはかなり複雑な取り決めがあります。それなりに詳しい人でも、完璧に説明しろと言われたら言葉に詰まってしまうかもしれません。
疑問に思った場合は個々の事例を当てはめてその都度考えてみましょう。
あんな