あんな
たかく
JRの普通乗車券には片道乗車券と往復乗車券があります。
この2つにはどのような違いがあるのでしょうか。往復乗車券の活用方法について解説します。
もくじ
往復乗車するにはどんなきっぷが必要か
鉄道の乗車券は、基本的に乗る方向が決められています。そのため、ある区間を往復乗車したいときは、それぞれ向きの違う2枚のきっぷが必要です。
たとえば、東京駅から新宿駅まで往復したい場合は、「東京→新宿」と「新宿→東京」の2枚が必要です。「東京→新宿」を2枚買っても往復することはできません。
きっぷはふつう、その駅発のものしか売っていないので、行きの分は行きの乗る駅で、帰りの分は帰りの乗る駅で買うことになります。
これが原則ですが、往復乗車券というものを買うと、このような面倒なことはしなくてよく、行きの駅で往復分をまとめて買うことができます。
ただ、みどりの窓口で頼めば、他の駅からのきっぷを買うこともできます。売ってくれるには条件があるのですが、会社によってはその条件がゆるいこともあります。そこで、往復乗車券を買うのと、片道乗車券を事前にまとめて買うのとでは、どのような違いがあるのかを解説したいと思います。
座席指定を伴う料金券と同時に使用する乗車券
指定席特急券と同時に乗車券も買う場合は、他の駅からの乗車券も買うことができます。
例:のぞみ号指定席特急券と同時に買う場合は、名古屋駅で東京→名古屋の乗車券も買える。
すでに所持している乗車券から別途乗車する区間の乗車券
別途乗車というのは、すでに持っている乗車券の途中駅から分岐して乗車したり、着駅からさらに別の区間を乗車することをいいます。途中の駅から分岐する形になる場合は、その駅で途中下車できる乗車券である必要があります。
例:東京→名古屋の乗車券を提示すると、名古屋駅で、熱海→伊東の乗車券が買える。
近隣の無人駅発となる乗車券
無人駅では乗車券を発売していなかったり、自動券売機で発売できる区間に制限があるので、近隣の有人駅でその分を買えるようになっています。
旅客営業規則第20条を参照
参考
旅客営業規則 乗車券類の発売範囲JR東日本
そのほか、JR東日本の指定席券売機や、えきねっとでは基本的にどの区間の乗車券も買うことができます。
往復乗車券とは
JRの乗車券には片道乗車券と往復乗車券があります。往復乗車券は片道の乗車券が2枚セットになったものです。
往復乗車券が発売される条件は
- 片道乗車券を発売できる区間であって
- 往復の区間と経路が同じ場合
です。有効期間と値段は片道乗車券の2倍になります。
片道の距離が600キロを超える場合は、往復割引が適用されて、値段が1割引きになります。
往復の経路は完全に一致している必要があります。たとえば、行きは東海道本線、帰りは中央本線というような区間はダメです。
在来線と新幹線を同一視する取り扱いについては、下の記事で詳しく説明しています。
時刻表にも載っていない特例!選択乗車を理解する
たかく
新下関~博多間の例外
新下関~博多間を通る場合は特殊な取り扱いがあります。この区間は在来線と新幹線で運賃が異なるため、同一の線路とみなしません。
ところが、この区間に限っては、「行きが新幹線、帰りが在来線」や「行きが在来線、帰りが新幹線」というような経路でも往復乗車券が発売されます。
この場合は乗車券に決められたとおりの経路を乗車しなければいけません。
行きと帰りで運賃が違うため、運賃は2倍ではなく、両者を合算したものとなります。
参考 新下関から博多間を利用する場合の特例きっぷのルール:JRおでかけネット往復きっぷがあるのは乗車券だけ
JRのきっぷには乗車券と料金券の2種類があります。
乗車券はいわば基本料金となるもので、列車に乗るときには必ず必要になります。料金券は特急券やグリーン券のことで、輸送サービスに上乗せしてアップグレードするためのものです。
このうち、往復がセットで発売できるのは乗車券だけです。
料金券は基本的に列車1本ごとに購入する必要があります。
例えば、東京~名古屋間を新幹線で往復するときは、東京都区内~名古屋市内間の往復乗車券と、行きの特急券、帰りの特急券というような買い方になります。
往復乗車券のメリット
往復乗車をするとき、片道乗車券と往復乗車券でどういう違いがあるのでしょうか。
支払いが1回で済む
片道乗車券で往復乗車する場合は2枚を別々に購入する必要があります。通常はその駅発の乗車券しか発売しないことになっているので、帰りの分を事前に購入することはできません(特急券などと同時に購入する場合を除く)。
往復乗車券を買えば、行きの出発前に1回購入するだけで済みます。
目的地の駅が無人駅で、きっぷを売っていない駅の場合は、事前に往復乗車券を買っておいたほうが無難です。また、ICカードやクレジットカードなどが使える駅から出発する場合は、帰りの発駅でも使えるとは限らないので、事前に買っておくと安心です。
また、領収書が1枚にまとまりますので、往復で買った方が管理が楽になります。
有効期間の自由度が高まる
往復乗車券の有効期間は片道乗車券の2倍です。2枚あるのだから、2倍なのは当然だと思いますが、往復乗車券のほうが自由度は高いです。
例えば、日帰りで往復するつもりで、今日の分の行きの片道乗車券と、今日の分の帰りの片道乗車券を買ったとします。どちらも片道乗車券の有効期間は当日限りだったとします。
ここで、旅行を開始してから事情が変わって、1泊することになった場合、帰りの乗車券は使えなくなってしまいます(この場合は有効期間内に駅で変更の手続きをすれば、翌日使うことはできます)。
一方、最初から往復乗車券を買っておけば、行きの券も帰りの券も2日間有効ですから、こういった予定変更の場合でも全く問題なく使用することができます。
もっとも、帰りのきっぷは帰りに買うという方が自由度が高いです。
【早見表あり】往復乗車券の有効期間を調べるのは少し面倒
途中下車を活用すればゆっくり旅行できる
100キロを超える乗車券では途中下車ができます。つまり、乗車券の途中の駅で一旦改札を出ることができます。3日間有効の乗車券であれば、途中で2泊して行くこともできるわけです。
往復乗車券を使うと有効期間が2倍になりますから、もっとゆっくり旅行することができます。
片道だと3日間有効の区間であれば、往復で6日間有効となりますから、行きに5日間かけ、帰りは1日で帰ってくる、なんていう使い方もできます。
600キロを超える場合は割引になる
片道の距離が600キロまでの場合は、単純に片道の2倍の運賃ですので、金銭的メリットはありません。ただ、600キロを超える場合は往復割引で1割引きになりますから、往復にしたほうが得です。
往復割引がきく区間の例をいくつかあげると、東京~西明石間が612.3キロ、新大阪~博多間が622.3キロ、東京~二戸間が601.0キロです。
540~600キロの場合の裏技
往復割引がきくのは600キロを超える場合だけですが、実は裏技があります。601キロの運賃の1割引きの方が、541~600キロの運賃よりも安いのです。
つまり、541~600キロの距離を往復するときは、600キロを越えた駅までの往復乗車券を買ったほうが安く済むのです。
片道営業キロ | 片道運賃(円) | 片道運賃×2(円) | 往復運賃(円) |
---|---|---|---|
501~520 | 8,360 | 16,720 | 16,720 |
521~540 | 8,580 | 17,160 | 17,160 |
541~560 | 8,910 | 17,820 | 17,820 |
561~580 | 9,130 | 18,260 | 18,260 |
581~600 | 9,460 | 18,920 | 18,920 |
601~640 | 9,790 | 19,580 | 17,620 |
具体的には、東京都区内~大阪市内間(556.4キロ)や東京都区内~神戸市内間(589.5キロ)を往復するときは、東京都区内~御着間(640.0キロ)の往復乗車券を買ったほうが安くすみます。(御着は姫路の2つ手前の駅です。)
駅名 | 営業キロ | 運賃計算 に使う 営業キロ |
片道運賃 (円) |
往復運賃 (円) |
往復 割引 |
---|---|---|---|---|---|
大阪(大阪市内 中心駅) | 556.4 | 556.4 | 8,910 | 17,820 | × |
(省略) | |||||
神戸(神戸市内 中心駅) | 589.5 | 589.5 | 9,460 | 18,920 | |
(省略) 兵庫 新長田 鷹取 須磨海浜公園 須磨 |
|||||
塩屋(神戸市内) | 599.7 | ||||
垂水(神戸市内) | 602.6 | ||||
舞子(神戸市内) | 604.6 | ||||
朝霧 | 606.5 | 606.5 | 9,790 | 17,620 | ○ |
明石 | 608.9 | 608.9 | |||
西明石 | 612.3 | 612.3 | |||
大久保 | 615.1 | 615.1 | |||
魚住 | 618.6 | 618.6 | |||
土山 | 621.7 | 621.7 | |||
東加古川 | 625.0 | 625.0 | |||
加古川 | 628.6 | 628.6 | |||
宝殿 | 631.9 | 631.9 | |||
曽根 | 635.9 | 635.9 | |||
ひめじ別所 | 637.9 | 637.9 | |||
御着 | 640.0 | 640.0 | |||
東姫路 | 642.4 | 642.4 | 10,010 | 18,000 | |
姫路 | 644.3 | 644.3 |
この場合神戸市内が絡んでくるので、少し複雑です。
東京からの営業キロが600キロを超える最初の駅は垂水ですが、神戸市内の駅なので、神戸駅の営業キロで計算されてしまいます。なので、実際には朝霧以遠で初めて600キロを超える乗車券になります。
他には、横浜市内~盛岡間(564.1キロ)を乗るときに、横浜市内~二戸間(629.8キロ)を買ったほうが安くなります。
あんな
運賃が同じだからって、一番遠くの駅まで買う必要あるの?
たかく
東北新幹線・北海道新幹線は「えきねっとトクだ値」のほうが安い
東北方面の場合は、往復割引よりももっと安くする方法があります。往復割引は運賃部分のみが10%引きですから、特急料金も考慮に入れると、たかが5%ほどの割引に過ぎません。
インターネット限定で購入できる、えきねっとトクだ値というものを使うと、特急券込みの値段が5~35%割引になります。
利用できる列車や購入期間に制限がありますので、一概に比較することはできませんが、トクだ値が利用できるのであればトクだ値を利用したほうがお得です。
トクだ値は片道ごとに発売され、往復割引との併用はできませんので、よく考えて選ぶようにしましょう。
初めてでも簡単にわかる!えきねっとトクだ値の要点学割を使う場合は学割証の節約になる
高校や大学などの学生・生徒であれば、片道100キロを超える区間でJRに乗るときに、学割を使うことができます。学割を使うと乗車券が2割引きで買えます。学割乗車券を買う時には、学校から発行された学割証をJRに提出する必要があります(学生証を見せるだけでは買えません)。
学割証はきっぷ1枚につき1枚を提出しなければなりませんから、片道乗車券を2枚買う場合は、学割証も2枚必要です。
ところが、往復乗車券を買う場合は、これが1枚で済むのです。
学割証は学校ごとに発行枚数が決められていますので、頼めばいくらでも発行されるものではありません。学校によっては申請がかなり面倒くさいこともあります。そのため、学割証はできるだけ節約して使いたいものです。
往復割引と学割は二重適用が可能
JRの「割引」は2つ以上を重複して適用することはできませんが、唯一例外的に学割と往復割引を2重に適用することが認められています。
学生・生徒が600キロを超える区間を往復乗車する場合は、往復割引で1割引になったあとに、さらに学割で2割引きとなります。結果的に28%引きになります。(0.9×0.8=0.72)
旅行をとりやめた時の手数料が1回分で済む
きっぷを買うときに旅行をやめることまで考慮に入れる人はあまりいないと思いますが、いざその立場になってみると身にしみます。
未使用の乗車券は、有効期間が切れる前であれば、払い戻しを受けることができます。その場合、1枚につき220円の手数料が引かれ、残りが返金されます。
片道乗車券を2枚買った場合は、それぞれに払い戻し手数料がかかり、440円かかります。一方、往復乗車券の場合はまとめて220円の手数料で済みます。
もっとも、帰りの分の乗車券を帰りに購入するつもりでいたのであれば、払い戻すのは行きの分だけですので、払い戻し手数料は220円で済みます。
往復乗車券のデメリット
メリットがあるからにはデメリットがあります。
経路が選べない
往復乗車券の場合は行きと帰りで経路が完全に一致している必要があります。
ただし、先に述べたように、在来線と新幹線は新下関~博多間を除いて経路が選択できます。
帰りの経路を変えたい場合や、どちらの経路を通るか決まっていない場合は、使えません。
有効期間が切り離せない
往復乗車券の有効期間は片道の2倍と決まっています。現地での滞在が長引く場合は、帰りの日が有効期間内に間に合わないこともあります。
例えば、東京~仙台間(351.8キロ)は片道乗車券の有効期間が3日ですので、往復乗車券の有効期間は6日間となります。この場合は出発から帰着までを6日間以内に済ませなければなりません。
有効期間が心配な場合は、帰りの乗車券は改めて購入するようにしたほうが良いです。
結局どっちがいいの?
以上のように、往復乗車券には様々なメリットがあります。
600キロを超える場合は割引になりますので、絶対に往復乗車券の方がお得です。
往復割引がきかない場合は、値段が変わりません。メリットとデメリットがありますので、よく考えて買うようにすると良いでしょう。片道乗車券を2枚用意するよりかは往復乗車券を買ったほうが良いですが、帰りの乗車券は帰りに買うほうが自由度が高いです。
往復乗車券 | 片道乗車券 2枚事前購入 |
片道乗車券 つど購入 |
||
---|---|---|---|---|
ねだん | 原則 | 片道の2倍 | 片道の2倍 | 片道の2倍 |
601キロ以上 | 上記の1割引 メリット |
|||
有効期間 | 片道の2倍 | ゆきかえり それぞれ |
ゆきかえり それぞれ |
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出発後 有効期間の延長 |
できません | 帰りの乗車券使用開始前なら 帰りの乗車券の有効開始日の変更は可 |
帰りの乗車券の有効開始日を あとから指定できます |
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学割証の 必要枚数 |
1枚 メリット |
2枚 | 2枚 | |
出発前に すべて払い戻し |
手数料 220円 |
手数料 440円 デメリット |
手数料 220円 |
|
ゆき券使用後 帰りの分を 払い戻し |
手数料 220円 |
手数料 220円 |
発生しない メリット |
あんな