あんな
たかく
JRのきっぷの規則は複雑怪奇で、初心者には全く理解不能のことがよくあります。
今回は新幹線に乗るとよく見かける「特定特急券」というものが何なのかを解説します。
全ての新幹線に共通の説明と、東北新幹線の盛岡以北・北海道新幹線・秋田新幹線に関わりのある事情に分かれています。
もくじ
「特定特急券」は「自由席特急券」と同じ意味
わかりやすく言ってしまえば、特定特急券は、自由席に乗れる特急券です。
列車に乗る、という立場から見ると、「自由席特急券」と全く同じ効力です。
ではどうして名前が違うのでしょうか。それは料金の計算方法が違うために、それを明示しているのです。
通常の自由席料金は(通常期の)指定席特急料金から530円低減した額と決められています。ところが、特別にそれよりもっと安い金額を定めている区間があります。これを「特定特急料金」と呼び、それによって発行された特急券を「特定特急券」と呼んでいるのです。
特定特急券になるか、自由席特急券になるかは、乗車する区間によって変わるので、購入する時に乗客が選ぶものではありません。「自由席で」と言えばどちらかが出てきます。
スーパーが特売のシールを貼るようなものですね。
指定席に変更するときの料金が違う
「自由席特急券」と「特定特急券」というように名前が明確に違うからには、異なる取扱いをする場面があります。
それは、自由席から指定席に変更する場合です。
通常の自由席特急券であれば、差額は一律530円(通常期)と決まっていますから、差額の530円を支払うことになることは計算しなくてもわかります。
ところが、特定特急料金は特別に自由席が安くなっていますから、指定席に変更するときに支払うべき差額が530円以上となります。この具体的な額は本来の指定席特急料金を調べて差額を計算する必要があります。
自由席と指定席の差額はシーズンによって変わります。閑散期は上記の530円を330円に、繁忙期は上記の530円を730円に読み替えてください。
自由席の特急料金が下の表に当てはまらないときに特定特急料金と呼びます。
閑散期 | 通常期 | 繁忙期 | |
---|---|---|---|
指定席特急料金 | (基準) – 200円 | (基準) | (基準) + 200円 |
自由席特急料金 | (基準) – 530円 | ||
指定席と自由席の差額 | 330円 | 530円 | 730円 |
こういうときに特定特急料金になります
では、どういう場合に特定特急料金が適用されるのでしょうか。
新幹線の隣接駅間など
新幹線の場合は隣接駅間に設定されています。
たとえば、新横浜~小田原間の指定席特急料金は2,290円ですから、通常の自由席料金は530円低減した1,760円になるはずですが、特定の特急料金が適用されて990円となります。
指定席に比べて半額以下になりますから、だいぶお得感がありますね。
(繰り返しになりますが、これは強制的に適用になるため、買う時に何か言う必要はありません。)
隣接駅間の他にも、かつて隣接駅間だったところにも適用されます。
例えば、掛川駅はあとからできましたから、静岡~浜松間は現在隣接駅間ではありませんが、特定特急料金が適用されます。
料金は以下のように決められています。
JR東日本 | JR西日本 | JR東海 | JR九州 | JR北海道 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
北陸新幹線 | 山陽新幹線 | |||||
~50キロ | 880円 ※ | 870円 | 870円 | 1,330円 | ||
51キロ~ | 1,000円 | – | 990円 | – | 1,520円 |
※ただし、東京~大宮間は1,090円
山形新幹線、秋田新幹線にはこの制度はありません。
また、以下の新幹線同士を乗り継ぐ場合や、直通列車に乗る場合は、基本的に両社の料金の合算となるため、どちらかが特定特急料金であれば、合算後も特定特急料金になります。
- 山陽新幹線と九州新幹線
- 東北新幹線と北海道新幹線
例えば、新大阪~久留米間の自由席料金は、新大阪~博多間と博多~久留米間の合算となります。後者が特定特急料金なので、合算後も特定特急料金です。
東海道新幹線
熱海~静岡間も隣接駅だった時代がありますが、特定特急券の制度ができたときにはすでに三島駅が開業していたため、適用になりません。
山陽新幹線
九州新幹線
新八代~川内間は、隣接駅間であっても特定特急料金はありません。
西九州新幹線
西九州新幹線は2022年9月23日開業です。
北陸新幹線
東京駅発着の料金は上野駅発着の料金に210円を加算した額なので、東京~大宮間も特定特急料金となります。
上越新幹線
東京駅発着の料金は上野駅発着の料金に210円を加算した額なので、東京~大宮間も特定特急料金となります。
東北新幹線
東京駅発着の料金は上野駅発着の料金に210円を加算した額なので、東京~大宮間も特定特急料金となります。
北海道新幹線
在来線にも特定特急料金がある
在来線特急でも全国で何箇所か、特定特急料金が設定されている区間があります。主に、短区間での利用料金が手軽になるように設定されていますが、隣接駅間に一律に適用するわけではありません。
在来線に関しては特定特急料金となる区間はあまり多くありません。
のぞみ号みずほ号の自由席に乗るとき
東海道・山陽新幹線の場合は、のぞみ号とみずほ号の自由席に乗るときに特定特急券を使います。
新幹線の自由席特急料金は同じ区間であればどの列車に乗っても同じ金額です。自由席特急券では乗車する列車を指定しないのでこれは当然です。
一方で、のぞみ号とみずほ号は他の列車に比べて指定席特急料金が高くなっています。つまり、指定席と自由席の差額が530円ではありません。そのため、特定特急券というものになります。当然それ以外の列車の自由席と共用のきっぷですので、券面には「自由席特急券/特定特急券」の文字が併記されています。
あんな
たかく
旅客営業規則 第57条1号
ニ 特定特急券
次に定める区間を、特別車両以外の座席車又は第13条第3項の規定によりB寝台を設備した寝台車に乗車し、自由席(自由席のない列車にあっては、指定席)を使用する場合に、乗車できる列車及び乗車区間を指定し、特定の特別急行料金によって、座席の使用を条件としないで発売する。
(イ)新幹線(中略)
e 東京・博多間を運転する特別急行列車のぞみ号(以下「のぞみ号」という。)又は新大阪・鹿児島中央間を運転する特別急行列車みずほ号(以下「みずほ号」という。)に乗車する場合(第7項の規定により特別急行券を発売する場合を含む。)の新幹線停車駅相互間(博多・鹿児島中央間の新幹線停車駅相互間及びaからdまでに定める区間を除く。)
JR東日本 旅客営業規則
旅客営業規則 第184条7項
新幹線ののぞみ号等以外の特別急行列車に乗車する場合に発売する自由席特急券とのぞみ号等に乗車する場合(のぞみ号等とのぞみ号等以外の新幹線の特別急行列車とを乗り継いで乗車する場合を含む。)に発売する特定特急券は、共用のものとすることがある。
東北・北海道・秋田新幹線の場合は意味合いがちょっと違う
ところで、東北新幹線(盛岡以北)・北海道新幹線・秋田新幹線に関しては、今まで述べたこととはちょっと事情が違います。
盛岡~新函館北斗間と盛岡~秋田間には、自由席というものが存在しません。なので、自由席特急券というものも存在しません。
だからこの区間を利用する場合は必ず指定席を取らないといけません…という話ならば簡単なのですが、そういうわけでもないのです。
全車指定席なのに指定席を取らなくても乗れるような仕組みになっているのです。
そこで登場するのが「特定特急券」です。名前は同じですが、他の新幹線とは効力が違います。走っている列車には指定席しかありませんから、座席に座ることができません。きっぷをよく見てみると「特定特急券(立席)」と書いてあります。
ただし、指定席に誰も座っていないときは、座っても良いことになっています。もちろん、本来指定席をとった人が現れたら譲らなければなりません。
盛岡~新函館北斗間の特定特急料金は、隣接駅間を除いて、指定席料金から530円を低減した料金です。なので、実質的には自由席特急料金と同じです。自由席車というものが存在しないため、「自由席特急券」ではなく、「特定特急券」と呼んでいます。
盛岡~新函館北斗間の隣接駅間は、他の新幹線と同様に「特定の特急料金」、つまり指定席料金とは関係なく決められた金額です。
この区間の特急券を買うときは窓口に行って「立ち席で」と言って買えば特定特急券が出てきます。
この区間の特定特急券は、えきねっとでは発売していませんので、駅に行って買う必要があります。指定席券売機で買う場合は、指定席の画面から入ると買うことができます。
ちなみに、この区間は何回か乗ったことがありますが、結構ガラガラなので、私は特定特急券で座れなかった経験はありません。
旅行シーズンの3連休などでは、全区間座れないことが結構あるようです。東北新幹線は、どちらかと言うとレジャー利用の比率が高い新幹線ですので、混む日と混まない日があります。
詳しい利用方法は以下の記事をご覧ください。
はやぶさ号こまち号は全車指定席なのに指定席を取らないで乗れる?まとめ
「特定特急券」という名前には、自由席という文言が入っていないので、ちょっとわかりにくいですが、自由席特急券と同じものです。
隣接駅間の場合は割安の特急料金になっているのでお得に感じますね。
東北・北海道・秋田新幹線の「特定特急券」は、指定席車の空席を利用することができます。
たかく