わかりにくい!途中駅で運転中止、特急料金払いもどしは全額か

わかりにくい!途中駅で運転中止、払いもどしは全額か

先日JR西日本で、途中で運転取りやめとなった特急列車の料金払いもどしの取り扱いに誤りがあったという発表がありました。

新大阪~大阪間で運転を取りやめた場合の取扱は特殊な事例で、わかりにくいので、少し説明が必要です。

かくいう私も、この件が起こるまで誤解していました。

何が問題か

2018年1月29日、特急列車サンダーバード4号大阪行きが、車両故障の影響で途中の新大阪で運転取りやめとなりました。

この影響で、大阪駅まで乗車する予定だった乗客は、後続の列車で大阪まで乗車しましたが、特急料金の払いもどしはないとの案内を受けました。

後日になって、特急料金は全額払いもどしをするべきであったとの発表がありました。

当日の案内をした係員はなぜこのような誤認をしてしまったのでしょうか。実は新大阪~大阪間は非常にわかりにくい例外規定があるのです。

参考 特急電車「サンダーバード4号」の特急券の払戻し誤りについてJR西日本

運転打ち切りは全額払い戻し

基本的な取り扱い方として、新幹線や特急列車が途中駅で運転を打ち切った場合は、特急料金は全額払いもどしとなります。そのうえで、後続の特急列車などに乗ることができます。

これは、たとえ乗れなかった区間が1駅間であろうと、全額払いもどしと決められています。乗客にとってかなり有利な取り決めです。

全額払い戻しの例外

ただし、この規則には例外があります。

例えば、東海道新幹線の東京行の列車が品川で運転を取りやめた場合があります。そもそも品川と東京では料金が全く同一ですし、この区間を乗れなかったからと言って料金を全額払いもどしをするというのは無理があるように思う人が多いでしょう。

このほかに、東北新幹線の大宮~東京間や、上野東京ラインの上野~品川間、山手線の品川~池袋間が同様の例として定められています。

この例外規定の中に、大阪~新大阪間も含まれます。

乗車中の特急列車が目的地までの途中駅で運転をとりやめた場合は、後続の特急・急行列車(運転をとりやめた列車が急行列車の場合は急行列車)にご乗車になれます。この場合、運転をとりやめた列車の特急・急行料金は全額お返しします。ただし、品川から東京間(東海道新幹線を含む)、大阪から新大阪間及び東北、上越、北陸新幹線の大宮から上野・東京間または上野から東京間のみ運転をとりやめた場合は、特急・急行料金の差額のみのお返しとなります。
事故などの場合の取扱い|JR西日本

JR西日本の案内にはこのように書かれています。今回の件ではこのただし書きに当てはまるため、特急料金の全額払いもどしは行わないと解釈するのが自然です。

サンダーバード4号の停車駅では、新大阪下車と大阪下車で料金の異なる乗車駅はありません。差額の払いもどしとなるのであれば、払い戻し額が発生する事はありません。

当日の係員もそのように解釈していたと思われます。

ですが、これが違うのです。

旅規を読んでみると

JRと利用客の間の契約書にあたる、旅客営業規則を読んでみると明らかになります。

(東京駅又は新大阪駅着となる急行券、特別車両券、寝台券又は座席指定券に対する料金の払いもどしの特例)
第290条
東海道本線(東海道本線(新幹線)を含む。)を経由する急行列車の急行券、特別車両券、寝台券又は座席指定券を所持する旅客で、下車駅を東京駅若しくは新橋駅又は新大阪駅とするものにあっては、第282条の2の規定により、品川駅と東京駅又は大阪駅と新大阪駅との区間が乗車できなくなった場合(当該区間のうち一部が乗車できなくなった場合を含む。)の急行券、特別車両券、寝台券又は座席指定券の払いもどしについては、運行不能となった駅を当該急行券、特別車両券、寝台券又は座席指定券の下車駅として取り扱うものとする。この場合、すでに収受した急行料金又は特別車両料金とすでに乗車した区間に対する急行料金又は特別車両料金とを比較して過剰額の払いもどしをする。
旅客営業規則|JR東日本

読むのに疲れますが、この例外規定が適用となるのは「下車駅を東京駅若しくは新橋駅又は新大阪駅とするものにあって」「品川駅と東京駅又は大阪駅と新大阪駅との区間が乗車できなくなった場合」と書かれています。

今回の場合は、下車駅が大阪駅ですので、この規定には当てはまりません。つまり、例外規定には当てはまらず、原則通り全額払いもどしとなります。

一般向けの案内ではわかりやすく表現するのが大事ですから、多少表現を簡略化するのは仕方がありません。しかし、方向に限定があることのニュアンスが抜け落ちてしまっているのは問題です。

この例外規定で差額の払いもどしとなるのは、こうのとり号やスーパーはくと号で新大阪着となる特急券を持っている人だけが対象ということになります。

乗客の側も自衛が必要

今回の件で、JRの営業規則の複雑さ、わかりにくさが表面化しました。

JRの係員であればすべて理解しているべきものですが、ここまでわかりにくいものであるのならば、今回のような誤認はやむを得ないのかもしれません。

乗客の側からしてみれば、JRの係員の指示通りに従って旅行しているわけですから、安心して身を預けたいものですが、このようなこともあり得るので、少しは疑ってかかることも必要です。

鉄道旅行を趣味とするならば、少しは規則のことも勉強しておいたほうがいいと思います。今回の件で私も一つ賢くなりました。

追記:大阪~新大阪間の問題は解決

2018年3月17日のダイヤ改正にあわせて、旅客営業規則も改正がありました。

JR東海の発表によると、くだんの第290条について、大阪~新大阪間の規定が削除されました。

つまり、大阪~新大阪間についても、乗車する方向にかかわらず、1区間でも運転できない区間が発生した場合は全区間払い戻しとなるようになりました。

今回の記事で取り上げたケースについてJR側も改善が必要だと考えたのかもしれません。

これによって、乗客の側に有利な方向に改善され、わかりにくさが解消されました。

参考 旅客営業規則の一部改正(平成30年3月17日から施行)(PDF)JR東海 今回の改正のメインは、年月日の表記を和暦から西暦へ改めることですので、その表記が長いです。この記事で取り上げている第290条については35ページ目に記載があります。

特急料金全額払いもどしとならない場合

特急券が全額払い戻しにならないのは以下の4つのパターンです。

それ以外は、一部でも運休になれば全額払いもどしになります。

こうしてまとめてみると、品川~東京間と新大阪~大阪間については、方向によって取り扱い方が違うことが問題になりえると言えます。

品川~東京間

差額の返金となる場合-大阪~新大阪間

新橋または東京着の特急券を持っている場合で、品川~東京間の一部または全部が運休となった場合に差額の返金となります。

成田空港からの成田エクスプレス号が東京駅で運転打ち切りをした場合は含みません(向きが違うため)。

東海道新幹線の場合は、東京着と品川着で特急料金が必ず同額となるので、品川で運転を打ち切った場合は返金額がゼロになります。

大宮~東京間(新幹線)

差額の返金となる場合-大宮~東京間

新幹線で、上野または東京着の特急券を持っている場合で、大宮~東京間の一部または全部が運休となった場合に差額の返金となります。

東京着の特急券を持っているときに、上野で運転が打ち切られた場合は差額の210円が返金となります。大宮で打ち切られた場合は区間により額が変わります。

品川~池袋間

差額の返金となる場合-品川~池袋間

品川~池袋間着の特急券を持っている場合で、品川~池袋間の一部または全部が運休となった場合に差額の返金となります。

方向に制限はありません。

成田エクスプレス号や日光号などがあてはまります。

上野~品川間

差額の返金となる場合-品川~池袋間

上野~品川間着の特急券を持っている場合で、上野~品川間の一部または全部が運休となった場合に差額の返金となります。

方向に制限はありません。東北本線を走る列車に限ります。

常磐線特急のひたち号、ときわ号が当てはまります。

(参考)大阪~新大阪間

2018年3月16日まで、以下の規定がありました。

差額の返金となる場合-大阪~新大阪間

新大阪着の特急券を持っている場合で、大阪~新大阪間が運休となった場合に差額の返金ということになっていました。

逆方向の、北陸方面からの列車の場合は含みません。

参考 特急電車「サンダーバード4号」の特急券の払戻し誤りについてJR西日本

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