あんな
たかく
JRの乗車券には片道と往復があることをご存じの方は多いと思います。
実はこれのほかに、「連続乗車券」というものもあります。つまり、普通乗車券には片道、往復、連続の3形態があるということです。
この連続乗車券というのはどういうものなのでしょうか。
もくじ
片道でも往復でも対応できないときの連続乗車券
片道乗車券と往復乗車券には条件があります。片道乗車券は、途中で折り返したり、同じ駅を2度以上通ったりすることができません。往復乗車券は、行きと帰りで経路が全く一致している必要があります。
これらに当てはまらない場合で、2枚の片道乗車券を連結した区間を乗車するときに連続乗車券となります。
わかりやすく言うと、A駅→B駅の片道乗車券と、B駅→C駅の片道乗車券がセットになったものが連続乗車券です。一つ目の区間の着駅と2つ目の区間の発駅が同じ駅である必要があります。また、連続できるのは2区間に限ります。3区間以上を一つの連続乗車券にすることはできません。
JR東日本 旅客営業規則
(普通乗車券の発売)
第26条
旅客が、列車に乗車する場合は、次の各号に定めるところにより、片道乗車券、往復乗車券又は連続乗車券を発売する。
(1)片道乗車券
普通旅客運賃計算経路の連続した区間を片道1回乗車(以下「片道乗車」という。)する場合に発売する。ただし、第68条第4項の規定により営業キロ、擬制キロ又は運賃計算キロを打ち切って計算する場合は、当該打切りとなる駅までの区間のものに限り発売する。
(2)往復乗車券
往路又は復路とも片道乗車券を発売できる区間であって、往路と復路の区間及び経路が同じ区間を往復1回乗車(以下「往復乗車」という。)する場合に発売する。ただし、往路と復路の経路が異なる場合であっても、その異なる経路が第16条の3に掲げる左欄及び右欄の経路相互である場合は往復乗車券を発売する。
(3)連続乗車券
前各号の乗車券を発売できない連続した区間(当該区間が2区間のものに限る。)をそれぞれ1回乗車(以下「連続乗車」という。)する場合に発売する。
どういうときに連続乗車券になるか
では、具体的にどういう乗り方をするときに連続乗車券を使うことになるのでしょうか。片道にも往復にもならない、というところがポイントです。
往復にならない、というのは比較的わかりやすいですが、片道にならない場合というのは少し説明が必要です。まず、片道乗車券が成立するにはいくつかの条件があります。かんたんに言うと、次の3つです。
- 同一方向に連続する限り、通算できる
- 環状線1周となる駅で打ち切る
- 折り返しとなる駅で打ち切る
- 環状線1周を越える場合
- 途中で折り返しとなるが、往復の行程が一致しない場合
環状線1周を超える場合
上の図で、A駅→B駅→C駅→D駅→B駅→A駅というように旅行する場合は、B駅で打ち切って連続乗車券になります。2回目にB駅についた時点で環状線1周となるため、ここで区切ります。
この場合、「連続1」がA駅→B駅(C、D経由)、「連続2」がB駅→A駅となります。
行きにもB駅で打ち切ると、A駅~B駅の往復乗車券とB駅→B駅の片道乗車券になりますが、それよりかは連続乗車券のほうが安くすみます。乗車券はできるだけ長くつなげたほうが安く済むためです。
ただし、往復部分が601キロを超える場合は、往復割引がききますので、往復乗車券にしたほうが安くなります。
B駅からB駅に行く乗車券が片道乗車券になるのか、と思う方もいるかもしれませんが、環状線1周となる駅で打ち切っているので、片道乗車券の要件を満たしています。環状線1周は片道乗車券、環状線1周を「超える」場合は連続乗車券ということです。
途中で折り返しとなる場合
上の図で、A駅→B駅→D駅→B駅→C駅というように旅行する場合は、D駅で打ち切って連続乗車券となります。D駅で、もと来た方向に引き返す形になりますので、ここで区切ります。
この場合、「連続1」がA駅→D駅、「連続2」がD駅→C駅となります。
ただ、このような乗り方のときは、連続乗車券を使わないほうが安く済む場合があります。
上の図のように、片道乗車券と往復乗車券の組み合わせにするという方法があります。
A駅とC駅の間が101キロ以上で、大都市近郊区間内完結ではない場合は、B駅で途中下車することができます。この場合は、途中下車中に別のきっぷを使ってD駅まで往復することができます。事前に乗車券を買ってあればB駅でわざわざ降りる必要はありませんし、D駅で降りるときに別途乗車区間の運賃を払うことも可能です。
連続乗車券を使う場合と、片道と往復に分ける方法では、一概にどちらが安くなると言うことはできません。実際に乗るときは両者の運賃を計算してみて安い方を買いましょう。
傾向として、BC間よりBD間のほうが長い場合は連続乗車券のほうが安く、逆の場合は片道と往復の組み合わせが安くなることが多いです。
また、上の図のように、いったん目的地の駅を通り過ぎてから引き返すような場合も、よくあります。
この場合は、連続乗車券が一番適切です。
初心者の方が思わず遭遇する連続乗車券はこのパターンが多いと思います。
たとえば、新幹線乗車区間をA駅→C駅、乗車券をA駅→B駅と指定すると、自動的に連続乗車券が発券されます。
実は連続乗車券に大した存在意義はない
制度として連続乗車券が規定されている以上、大層な意味があるように思ってしまいますが、実は思ったほどメリットはありません。
連続乗車券は片道乗車券2枚をセットにしたもので、値段は単純に合算したものです。片道乗車券2枚を別々に買うのと比べて、明確な違いはありません。
みどりの窓口に行けば、基本的にはどの区間の乗車券でも売ってくれるので、連続乗車券がないと困るという状況がありません。
JR東日本の指定席券売機や「えきねっと」では、そのような制限なしに他の駅発の乗車券を買うことができます。
“連続乗車”の”往復券”はない
片道乗車券にならない経路の「往復券」は作れません。
たとえば、東京→京都は片道乗車券、東京→大津は京都で折返しとなるので、京都で打ち切って連続乗車券になります。すると、前者は往復乗車券を作れるのに対し、後者は往復セットで買うことはできません。
最初に説明したように、乗車券の種類は片道、往復、連続の3種類しかなく、連続乗車券は連続2区間の乗車券をまとめたものです。
連続乗車券となるような経路の「ゆき」「かえり」なると、片道乗車券4枚分になるわけで、連続乗車券は連続する2区間という決まりに反してしまいます。
こういう場合は、「ゆき」と「かえり」それぞれで連続乗車券とする必要があります。これはちょっと面倒ですが、そういう決まりになっているのです。
指定席券売機で乗車券を買うときに、経路が連続乗車券となる場合は、「往復」が選べないようになっています。
連続乗車券を使うメリット
大した意義はないとはいえ、わずかながらメリットもあります。
片道乗車券と連続乗車券の違いは、片道乗車券と往復乗車券の違いと、ほぼ同じことです。
支払いが1回で済む
片道乗車券は基本的にその駅発のものしか発売しないことになっているので、乗車券の発駅まで行って買う必要があります。
例えば、A駅→B駅とB駅→C駅という2区間の乗車券が必要な場合、1枚目の乗車券はA駅で、2枚目の乗車券はB駅で買う必要があります。
連続乗車券であれば、まとめてA駅で買うことができます。
ただし、みどりの窓口に行けば他駅発の乗車券でも売ってくれますので、あまりこのことが問題になることはないと思います。
有効期間の自由度が高まる
片道乗車券を2枚買った場合は、それぞれに固有の有効期間になりますが、連続乗車券では2枚の有効期間を合算したものとなります。
例えば、1枚目の有効期間が3日間で、2枚目の有効期間が2日間の場合、連続乗車券の有効期間は5日間となります。
2枚とも有効期間が5日間となるので、1枚目を5日間かけて使うこともできるわけです。
片道乗車券2枚に分けた場合は、1枚目は3日間で、2枚目は2日間で使わないといけないので、連続乗車券のほうが自由度が高まります。
レール&レンタカーを使うとき
「レール&レンタカー」というのは、鉄道とレンタカーを同時に申し組むことによって割引を受けることができる商品です。
これを使うと鉄道運賃が2割引、特急料金などが1割引になります。このとき、鉄道の乗車券は、片道、往復、連続のいずれか1回が割引の対象になります。ただし、レンタカーの乗り捨てを利用する場合は、その区間について鉄道乗車経路が分断されていても認められます。
そのため、乗り捨てるわけでもないのに、片道乗車券を2枚使うような行程の場合は、いずれか1枚にしか割引が適用できません。割引になるのはレンタカー利用駅を含む方の乗車券です。
そういった場合に、連続乗車券にまとめることができれば、2区間とも割引の対象にすることができます。
参考 レール&レンタカーきっぷとは?レンタカーならJRの駅レンタカー学割を使う場合は学割証の節約になる
高校や大学などの学生・生徒であれば、片道100キロを超える区間でJRに乗るときに、学割を使うことができます。学割を使うと乗車券が2割引きで買えます。学割乗車券を買う時には、学校から発行された学割証をJRに提出する必要があります(学生証を見せるだけでは買えません)。
学割証はきっぷ1枚につき1枚を提出しなければなりませんから、片道乗車券を2枚買う場合は、学割証も2枚必要です。
ところが、連続乗車券を買う場合は、これが1枚で済むのです。
学割証は学校ごとに発行枚数が決められていますので、頼めばいくらでも発行されるものではありません。学校によっては申請がかなり面倒くさいこともあります。そのため、学割証はできるだけ節約して使いたいものです。
ただ、2枚とも学割が必要な100キロ以上の乗車券になる場合はあまりないと思います。連続乗車券が必要なケースでも、どちらかの券片は100キロ未満の比較的短区間のことが多いはずです。もともと学割が必要な乗車券を1枚しか必要としていないのであれば、メリットにはなりません。
旅行をとりやめた時の手数料が1回分で済む
きっぷを買うときに旅行をやめることまで考慮に入れる人はあまりいないと思いますが、いざその立場になってみると身にしみます。
未使用の乗車券は、有効期間が切れる前であれば、払いもどしを受けることができます。その場合、1枚につき220円の手数料が引かれ、残りが返金されます。
片道乗車券を2枚買った場合は、それぞれに払いもどし手数料がかかり、440円かかります。一方、連続乗車券の場合はまとめて220円の手数料で済みます。
もっとも、2枚目の乗車券を現地で購入するつもりでいたのであれば、払いもどすのは1枚目の分だけですので、払いもどし手数料は220円で済みます。
マニアックな制度を利用しているという自己満足
連続乗車券はそもそも出番のあまりないきっぷです。こういうきっぷはあまりお目にかかれませんから、利用できる機会があったら利用してみるのも面白いと思います。
まとめ
連続乗車券は、片道でも往復でもない第3の乗車券です。
複雑な経路で旅行するときにお世話になることがあります。実用上は片道乗車券を2枚買うのと大した違いはありません。