あんな
たかく
ふだん行かないようなところに旅行に出かけると、わからないことが多くて大変です。そういった困り事がいやで旅行に出かける足が遠のいてしまうという人もいるのではないでしょうか。
ですが、わからないことが多いほうが楽しい旅行になると思うのです。
どの電車に乗ればいいのかわからない
鉄道のことならなんでも知っているような顔をしている私ですが、すべてを知っているわけではありません。
初めて広島に行ったときのこと。自分の乗るべき列車がわからなくて不安になったことがあります。2010年頃のことですが、当時は今ほど列車の行き先案内が親切ではありませんでした。
その日は岡山に泊まる計画でしたので、広島駅から岡山駅に行く列車に乗ろうとしていました。ところが、岡山ゆきの列車なんて無いんです。山陽本線にはかなり長距離を走る列車があって、行き先の種類がかなりいろいろあります。
広島から岡山へは上り方向なので、とにかく上り列車を探さなければいけません。ですが、当時は電車の側面にある表示版に行き先の駅名しか書いてありませんでした。それも、聞いたことのない駅名ばっかりです。
広島から上り方面は「白市」「糸崎」、下り方面は「大野浦」「岩国」などが多いです。このうち岩国は新幹線の新岩国駅があるのでかろうじてわかりますが、あとの3種類は見たことも聞いたこともありません。おまけに、下関などという、とんでもなく遠くの行き先が見えることもあります。
路線図を見ないと上りか下りかさえもわからない状況です。こういうのを「右も左もわからない」というものか、と思い知りました。
路線図に乗っていない駅に行く列車
それでも、駅のホームには路線図が貼ってあり、それを見ればだいたいのことはわかります。
どうやらこれらしいという電車を見つけたので、本当にそれが山陽本線の上りで、岡山駅を通るのかどうかを路線図で調べようとしました。
これから乗ろうとしている電車に「三石」と表示されています。広島から岡山までの線を一駅一駅辿ってみても、そんな駅はありません。そうであれば他の方に行ってしまう列車なのかと思って、他の方向を見てみましたが、そんな駅はないのです。
それでは一体この電車はどこに行ってしまうのでしょうか。
「わからない」ということが楽しい
この話を聞いてどのような気持ちになりましたか。
旅先でそんな困ったことが起こったら嫌だなぁと思ってしまう人が多いと思います。
ところが、私は非常に愉快な気分でした。
なぜなら、どの電車に乗ればいいのかわからない、なんていう状況が自分にとってかなり珍しい状況だからです。それも、路線図に乗っていない駅に行く電車なんてちょっとしたミステリーです。
例えて言うなら、ゲームをやっていて進め方がわからないときの興奮に似ているかもしれません。
ちょっと調べれば三石駅がどこにあるかはわかりました。上りで岡山よりもだいぶ先にある駅です。三石ゆきに乗れば岡山駅に行けることがわかり、その列車に乗って無事岡山に行くことができました。
広島駅に貼ってある路線図には岡山駅までしか書かれていなかったので、どうりで三石駅が見つからないわけです。でも、そんなに遠くまで行く列車なのに、全然無名の駅名を平然と表示するだけなんて不親切だなぁとも思いました。広島から発車する列車の中で上り方向に一番遠くまで行く列車で、かつ1日1本しかないということは後から知りました。
現在では広島から山陽本線上り方面は「G」のマークが表示されていますので、かなり乗りやすくなりました。
まとめ
この一連の出来事は私の中でかなり印象的な思い出となっています。
わからないことが生じ、それを解決しようとした過程そのものが非常に貴重な体験になりました。後から振り返ってみると、広島駅から岡山駅に向かうという客観的な行動としてではなく、三石などという聞いたこともないところに行く列車に乗ったという体験がよっぽど面白かったです。
たしかに、不安はないに越したことはありません。ただ、全く不安がない旅行は本当に楽しいのでしょうか。このできごとのように、旅先ではわからないことが多いときのほうがワクワクし、充実した旅行になります。