あんな
どうにかスピードアップする方法はないものかしら
たかく
青春18きっぷでの旅行は楽しいものですが、ときにはうんざりすることもあります。
長距離を旅行しようとすると想像以上に時間がかかります。青春18きっぷ利用中に新幹線に乗ってみたいと思う方も多いのではないでしょうか。青春18きっぷと新幹線を組み合わせて利用するときのコツを一緒に考えていきましょう。
これができれば青春18きっぷ初心者卒業です。
もくじ
新幹線ワープとは何か
青春18きっぷを使って旅行していると、さすがにスピードが遅すぎてうんざりすることがあります。
そこで、ちょっとした区間を新幹線に乗ることによって、局所的にスピードアップを図ろうというのが「新幹線ワープ」です。鉄道旅行を宇宙旅行になぞらえてこういう呼び方をします。この用語はJRが公式に言っているものではありません。
青春18きっぷでは新幹線に乗ることができません。特急料金を追加で払って乗ることもできませんから、改めて乗車券と特急券を購入する必要があります。そうすると想像以上に追加コストがかかることがわかるでしょう。あまり新幹線に頼りすぎるとコスト削減効果が失われてしまいます。時間とコストのバランスをしっかり考えてやる必要があります。
青春18きっぷって本当に新幹線に乗れないの?スピード差から考えるワープ理論
新幹線ワープの基本的な考えかたは、在来線と新幹線のスピード差を利用して新幹線で先回りするということです。
簡単に計算してみましょう。在来線の各駅停車の表定速度を60 km/h、新幹線の表定速度を180 km/hとします。新幹線のスピードはこだま号などの各駅停車タイプを想定しています。方程式を立てて短縮できる時間を計算すると、1時間短縮するのに必要な新幹線乗車距離は90 kmということになります。
\begin{eqnarray*}
x:乗車距離 (\mathrm{km}), t:短縮時間 (\mathrm{h}) \\
\frac{x}{60}-\frac{x}{180}=t \\
∴ x=90t
\end{eqnarray*}
つまり、90 kmだけ新幹線を利用すれば、在来線との時間差は1時間になります。45 kmで30分の先回りです。ただし、実際に旅行するときは在来線と新幹線の乗り継ぎ時間を考慮に入れなければいけませんから、多少これより長く乗る必要があります。
新幹線ワープをコスパで考えてみる
つぎに、それだけ新幹線に乗るのにいくらかかるでしょうか。
区間 | 距離 | 運賃・料金 | 短縮時間 | 1時間あたりコスト |
---|---|---|---|---|
熱海~豊橋 | 189.0 km | 5,940円 | 約2時間 | 約2,970円 |
熱海~掛川 | 124.7 km | 4,840円 | 約1時間 | 約4,840円 |
静岡~浜松 | 76.9 km | 2,330円 | 約30分 | 約4,660円 |
以上の表のように、ざっくりとした計算ですが、1時間短縮するのにかかる費用は3~5,000円程度が相場ということになります。
この結果の受け止め方は複雑だと思います。時給換算で3~5,000円というと、かなり割高です。とくに青春18きっぷを利用するからには出来る限り交通費を節約したいということも多いですから、この金額はもったいないと思ってしまいます。
ですが、1時間短縮するために120 km新幹線に乗るということは、その区間の在来線の2時間の乗車をしなくて済むことになります。そうなると時給換算で1,500~2,500円の価値だと考えることもできます。
青春18きっぷの1枚分の値段とワープ費用を合算して考えてみましょう。
18きっぷ1日分の2,410円と、1時間短縮するためのワープを1回、4,000円使ったとします。そうすると全体として6,410円かかった旅行ということになります。東京~掛川を新幹線で旅行したときの定価が7,470円ですから、東京~名古屋とか、東京~大阪で考えると、依然としてかなり割安です。
とはいえ、純粋なスピード差で稼ぐ方法では、そこまでリーズナブルな価格にはなりづらいという面があります。
コストに幅があるのはなぜか
先程言ったように、1時間短縮するためには3~5,000円の費用がかかります。この金額には結構ばらつきがあります。それはどうして生まれるのでしょうか。
新幹線の特急料金は100キロごとに切り上がります。そのため、120キロ乗る場合と180キロ乗る場合で、特急料金は変わりません。料金が跳ね上がった直後の距離だと割高になり、跳ね上がる直前ぎりぎりまで粘れば割安になるという仕組みです。
ただし、青春18きっぷと併用はできませんから、乗車券も別途買うことになります。乗車券は20キロ刻みなどになっているので、同じ特急料金だったとしても、乗る距離は短いに越したことはありません。
うまく使えばお得な特定特急料金
局所的に割安になっていることがあります。これには「特定特急料金」と言うものが関わっています。
通常、自由席を利用するためには指定席特急料金から530円マイナスした額が必要です。ところが、「特定の特急料金」が定められている区間があって、そういう区間では1,000円以上お得に自由席に乗ることができます。
具体的には、隣接駅間を利用する場合に安くなります。途中駅が後からできたなどの事情で隣接駅間でない区間にも一部設定があります。
たとえば、三島~静岡間は指定席利用で3,280円かかりますが、自由席であれば1,980円しかかかりません。(運賃・通常期の料金の合算額です)
つまり、この特定特急料金の区間をうまく選んで使えば低コストで効率よくワープすることができるのです。ただし、1区間新幹線に乗ったくらいでは、1本前の在来線に追いつくこともできないことが多いです。実際にワープに使うときはできるだけ長い距離を乗れる特定特急料金区間を探しましょう。
特定特急料金については以下の記事で詳しく解説しています。
特定特急券って何?自由席特急券との違いは?接続の良し悪しでパフォーマンスが変わる
スピードの差だけを考えると以上のようになりますが、現実にはもっと事情が複雑です。
理想論で言えば1時間短縮するのに90 km新幹線を利用すればいいと言いました。ところが現実にはそれよりも長く乗る必要があります。それには乗り換えのタイミングや運転間隔などが関わってきます。
たとえば、在来線の運転頻度が20分間隔だとします。そうすると、新幹線で30分先回りしたとしても、結局は1本先を走る、20分前の在来線に追いつくのがせいぜいです。
また、30分先回りするために新幹線に乗ろうとして、新幹線が来るのを20分待っていたら、結局10分の節約にしかなりません。
最悪のケースとして、米原~京都間を示しておきます。
米原~京都間を新幹線に乗ると、在来線の新快速よりも33分速くなります。
ただ、在来線の運転間隔が30分おきなので、乗り継ぎ時間を考慮すると、1本も先回りできません。所要時間が33分も短縮されているのに、実際に目的地に着く時間は1分も早くなりません。
というように、在来線の運転頻度と新幹線の運転頻度が、ワープの効果にかなり関わってくるのです。
新幹線を使って在来線の乗り継ぎ時間を免れる
ところで、在来線を素直に乗り継いで旅行していると、結構待たされる場面というのがあります。
たとえば、東海道線の場合で言うと、静岡地区では20分サイクルでダイヤが組まれていますが、名古屋地区では15分サイクルでダイヤが作られています。ということはどこかしらで待ち時間が発生することになります。
この乗り継ぎのロスを、新幹線に乗ることによって回避することができれば、理論上の短縮効果よりもさらに時間を節約することができます。
静岡~浜松間は理論値で30分の節約になるといいました。ところが、1時間の節約になる場合があります。
沼津駅9時10分発の下りで出発すると、静岡(または興津)で15分待たされて乗り継ぎ、浜松(または掛川)で13分待たされて、豊橋に到着するのは12時18分です。合計で30分近くタイムロスが発生するわけです。
ところが静岡駅でひかり号に乗り換えて浜松まで行き、先を走る在来線に乗れれば豊橋に11時17分に着けます。静岡では4分、浜松で8分の好接続です。さらに途中の掛川駅をちょうど通過しますので、新幹線の速達効果の恩恵を最大限にできます。
あんな
たかく
新幹線に乗ることで乗り継ぎ待ち時間を回避することができれば、このようにかなり効率の良いワープとなります。
ただし、静岡と浜松に停車するひかり号は1時間に1本しかありませんから、このようにうまい具合に利用するにはあらかじめ調べておく必要があります。
ワープは中盤から後半にかけてするとよい
ワープを使うのは旅の前半に持ってくるか、後半に持ってくるか、どちらが良いのか考えてみましょう。
計画通りに行くのであれば、いつワープを使ってもいいのですが、不確定要素のことを考えると、ワープは中盤にするのが良いです。
途中で事故などがあり、在来線が遅れたりした場合は、どこかで新幹線に乗らないと目的地に間に合わなくなってしまいます。
こういうときに、序盤でワープしてしまっていると、同じ日に2度新幹線を使う羽目になってしまいます。それでも悪いことはないのですが、なるべくなら一区間にまとめてしまったほうが総額が安くなります。
新幹線ワープを計画している区間に差し掛かる前に事故に巻き込まれた場合は、ワープする区間を引き伸ばせば済む話ですので、追加の出費が抑えられる可能性が高まります。
逆に、遅い時間帯にワープを計画しているのはもっと深刻です。目的地に近い地点で事故にあってしまった場合は、その先全区間新幹線に乗ったとしても間に合わない、といった事例が出るかもしれません。こうなると、その日のうちにたどり着くことができませんから大変です。
一方、自分自身の疲れを考えると、序盤で新幹線に乗るよりも、あとの方で新幹線に乗る計画にしておいたほうが楽ではあります。また、在来線で夕方の通勤ラッシュに巻き込まれるとうんざりするという事情もあります。
これらのことを考えると、新幹線ワープは夕方から夜にかけての遅くない時間に計画するのがベストだと思います。
事故というと、そんな大げさなものにはめったにあわないと思ってしまう方もいるかも知れませんが、あなどってはいけません。
数百キロを在来線で旅行するということは、日本中のどこで事故があっても、影響を受ける可能性があります。
東海道本線などの主要幹線は超長距離の貨物列車が走っていますので、想像以上に広範囲に遅れが波及することがあります。
また、トイレに入っている間に列車に乗り遅れる、列車を乗り間違える、駅で迷っている間に乗り遅れる、などの、自己責任による事故も起こります。
実際にやってみよう
それでは実際に新幹線ワープをするときのやり方を考えてみましょう。
ポイントは
- 1時間短縮するのに約3~5,000円かかる
- 特定特急料金が適用されれば安く済む
- 在来線のタイムロスを回避できれば効果が高い
- 在来線に乗るのが苦痛な区間を回避できれば精神的に楽
といったところです。
ワープは急遽することになる
私個人の意見としては、純粋に時間を短縮するコストとして1時間に3~5,000円も払うのは割高だと思ってしまうので、特別なメリットがなければワープしません。
ワープする理由で一番多いのは、乗り遅れの挽回です。
在来線を乗り継いで旅行していると、どうしてもトラブルなどで予定通りの列車に間に合わないことが出てきます。
例えば、その後ローカル線に乗り継ぐなどの計画を立てていると、路線によっては4~5時間に1回しか列車が走っていないような区間があったりして、ちょっとの遅れが半日後まで影響を及ぼしてしまうような事例が出てきます。場合によっては行くのを諦める場所が発生することもあります。そういったときに4~5,000円で挽回できると考えると安い買い物だと言えます。
あらかじめ綿密に計画をたてるのであれば、ワープしなくても済むような行程を立てますが、急遽アクシデントが発生してワープすることになる事が結構あります。
どの区間をワープするか
乗る区間が短ければ、ワープする区間を迷うことはありません。ところが、東京~大阪間などの長距離を旅行しているときには、果たしてどの区間をワープすればよいのかを考えるのは結構面倒で難しい作業です。
基本的には、在来線の乗り継ぎタイムロスが多いところや、在来線と新幹線の速度差が大きい区間を選べば良いです。
たとえば、東海道線で言うと、熱海~豊橋間の静岡地区は各駅停車しか走っていないので、新幹線の速達効果は大きくなります。一方、名古屋周辺や大阪周辺の新快速が走っているような区間は、そもそも在来線が速くて快適なので、新幹線に乗る効果は少なくなります。
そのほか、タイミングが合うかどうかも重要です。ワープにうまく使えるような新幹線は1時間に何本も走っていないことが多いです。列車の多い東海道新幹線でも、こだま号とひかり号を合わせて1時間に3本しかありません。こればっかりは自分が乗るタイミングがあうかどうかの問題なので、個々の事例に応じて調べる必要があります。
あんな
たかく
ワープする区間を選ぶときの具体的なやり方を以下の記事で解説しています。
新幹線ワープする区間はどう選ぶか、東京~博多を例にワープを使う時間帯
時間帯によってもワープの効果は違います。
在来線の電車は朝夕の通勤ラッシュの時間帯にかなり混雑するので、そういった時間帯に通り抜ける区間を新幹線でワープしてしまえばだいぶ楽になります。
また、旅の終わりは疲れていますから、帰りの最後に近い区間をワープするという考え方もあります。旅の序盤の元気なうちに新幹線ワープを使ってしまって、最後にぐったり疲れた状態で在来線各駅停車に乗らなくてはいけなくなってしまうのは避けたいですね。
また、在来線は新幹線に比べて景色が楽しいというメリットがあるのですが、日が暮れてしまえば関係なくなってしまいます。暗くなってからの在来線の旅行はつまらないと感じることが多いので、暗くなってからは新幹線を使ってしまうというのも手です。
ただし、新幹線ワープを最後までとっておくと、万一ダイヤ乱れで帰宅時間が間に合わなくなってしまった場合に、挽回する手段がなくなってしまうリスクがあります。在来線が遅れたとしても新幹線の最終列車は待ってくれません。
まとめ
新幹線ワープは奥が深いものです。
ワープをする行程を調べられるツールは存在しないので、紙の時刻表をめくりながら頭をひねる必要があります。うまくワープできる行程を発見したときの嬉しさと言ったら格別のものです。
実際に役に立つ知識でもありますが、時刻表トリック的な頭の体操にもなります。列車内の暇つぶしにも楽しいのではないでしょうか。
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ワープすると効果的な区間を路線別に説明しています。
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