あんな
何か落とし穴があるような気がするけど。
たかく
これがわかってなくてトラブルに繋がることもあるんだ。
私が旅行をするときは、青春18きっぷ利用を前提とすることが多いです。
そういう旅行ばかりしている立場として、これだけはわかっておいて使ってほしいというポイントをお伝えしようと思います。青春18きっぷ最大のデメリットの話です。
青春18きっぷは時給1,800円
いまさら説明するまでもありませんが、青春18きっぷは、日本全国のJR線が1日2,370円で乗り放題になるきっぷです。
東京から大阪まで片道1万円以上するのに何でそんなに安いんだと思ってしまいますが、新幹線に乗ることは出来ないんですね。それどころか在来線の特急列車にも乗れません。つまり各駅停車や快速列車にしか乗れないということです。
それはどういうことかというと、東京から大阪に行くのに9時間かかるということです。これで安さの秘密が納得できたのではないでしょうか。
合理的に考えればこういうことです。
所要時間 | 運賃・料金 | |
---|---|---|
新幹線 | 2時間30分 | 14,720円 |
18きっぷ | 9時間 | 2,410円 |
差 | △6時間30分 | 12,310円 |
新幹線と18きっぷの差を考えましょう。6時間30分余計にかかる覚悟があれば、12,310円が節約できるのです。これは時給1,890円に匹敵します。
こういった理由から、青春18きっぷを使って旅行する若者が大勢いるわけです。
あんな
たかく
ただ座ってるだけのバイトが時給1,800円ならかなり美味しいでしょ

JRは何のために18きっぷを発売しているか
ではなぜ、このような、旅行者にとって大変お得なきっぷが発売されているのでしょうか。もちろんJRは営利企業ですから慈善事業ではありません。
都市部に住んでいる人にとって見れば、実感がわかないかもしれませんが、地方に行くと誰もが鉄道を利用しているわけではありません。自分で自動車を運転できない人しか乗っていない事が多いのです。つまり、高校に通学する学生と、お年寄りが主な利用客となります。
長距離旅行する人がほとんど鉄道を使わなくなってしまったという実情があるのです。特に在来線の普通列車の利用客の低迷が顕著でした。
そういった需要を喚起するために発売されたのが青春18きっぷというわけです。これによってJRは多大な収益源を確保することとなりました。
もう一つの特徴として、学生が長期の休みの期間しか使えないというものがあります。この時期は普段通学に利用している学生が乗ってくれないので、本当にガラガラの列車ばかりになってしまいます。そういった列車にもっと人を呼び込もうという意図があるため、この時期限定となっているのです。

余り物の安売りにすぎない
つまり、JRとしては、走らせている列車に誰も乗ってくれない時期があるから、格安で乗せてくれている、というわけです。だから、基本的に余剰サービスの処分というわけです。
私の言いたい、18きっぷ最大のデメリットとはこのことです。
「JRは18きっぷ利用客のためにサービスを提供しているわけではない」
ダイヤは18きっぷ利用者のことを考えて作っているわけではありません。1回走らせると決めたら1年後のダイヤ改正まで、基本的に毎日同じ時間に列車を走らせなければいけません。だから、年間を通して需要を見込める量の列車しか走らせないのは当然のことです。
青春18きっぷのシーズンになると、毎度毎度激しく混雑する列車がありますが、だからといって列車を増やすことは基本的にありません。どうせ増発するのであれば、利益率の高い新幹線を増発する方が良いからです。
あんな
たかく

18きっぷシーズンに増発する列車も昔はあったはず
それでも、18きっぷシーズン中に増発する列車がないわけではありません。今では東海道線に「ムーンライトながら」が僅かに残る程度になってしまいましたが、昔は18きっぷシーズンに合わせて長距離を走る夜行快速列車が各地に走っていました。
これは他の列車や交通手段の混雑がひどすぎて収拾がつかないからではないかと思います。
例えば静岡周辺の普通列車は静岡に住んでいる人が乗るために走っているものです。そこに、シーズンになると東京名古屋間を移動する18きっぷ利用者が殺到して大変な混雑になってしまうわけです。これでは日常的に生活利用している側からしたら大変迷惑な話です。
18きっぷと並んで貧乏旅行のお供に「高速バス」という手段もありますが、帰省シーズンにはこちらも軒並み混雑して大変です。つまり、全国的に移動需要が高まっている時期は、たとえ儲からなくても、列車を増発する社会的要請があるわけです。冒頭でJRは慈善事業をしない、と言いましたが、実際にはかなりの慈善事業を行っている状況であったのかもしれません。
ところが、最近は飛行機も安くなりましたし、高速バス網もかなり整備されています。そんな中でJRが混雑しすぎて収拾がつかなくなることは少なくなったといえます。その結果、18きっぷ利用者向けの列車が次々と姿を消していったのかもしれません。「ながら」がなぜ今も残っているのか不思議なぐらいです。
あんな

デメリットに魅力を感じる
私が18きっぷ旅行が好きなのは、経済的合理性では説明しきれない部分があります。それはなぜかと考えたときに、この「デメリット」が思い浮かぶのです。
お金を払ったらその分に見合ったサービスを提供してくれる、というのは当然のことと思われていますが、そうではない世界に魅力を感じてしまうのです。ある種、ヒッチハイカーと同じ感覚を味わっているのかもしれません。
そういうわけで、これから18きっぷを使って旅行してみたいという方は、それなりの覚悟をもってやってみてください。それ次第で、笑って帰ってくるか、疲労困憊で帰ってくるかが決まると思います。
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