JRは教えてくれない、新幹線と18きっぷ旅行のちがい

JRは教えてくれない、新幹線と18きっぷ旅行のちがい

青春18きっぷでは特急や新幹線に乗れません。

青春18きっぷで旅行するのが初めてという方にとっては、そういった旅行がどんなものになるのか想像もつかないと思います。新幹線や特急に乗れないと、どのような旅行になるのかを様々な面から考えてみたいと思います。

スピードのちがい

まず、新幹線や特急を使う普通の旅行とはスピードが違うという点があります。

青春18きっぷで旅行するのであれば、所要時間の認識を大幅に変える必要があります。

表定速度とは

旅行速度をはかる時によく「表定速度」というものを使います。これは停車時間も含めた平均旅行速度のことです。

例えば東海道新幹線のぞみ号で東京から大阪に行く場合を考えてみます。

のぞみ1号は東京駅を朝6時ちょうどに出発し、新大阪駅に8時22分に到着します。つまり、552.6 kmを2時間22分で走るわけですから、表定速度は233.5 km/hと計算することができます。

東海道新幹線の最高速度は285 km/hですから、これよりは遅くなります。これは途中のカーブでの減速や、停車時間も考慮して計算するためです。

実質的な旅行速度は表定速度ではかるとよくわかります。

高速道路を運転して旅行する場合はほぼ停車や減速が無いので、表定速度は90 km/hくらいになるでしょう。

普通列車の表定速度は時速60キロ

では、青春18きっぷで旅行する場合はどうでしょうか。

東海道線などの幹線を走る普通列車は最高速度が110~130 km/hくらいです。ところが途中で停まる駅が多いため、表定速度は65 km/hも行けば速い方です。

ローカル線は千差万別で、一般的には最高速度は60~80 km/hくらいです。表定速度となると、もっとバラバラで、よくて50 km/h、最悪の場合30 km/hを下回ることもあります。

東京から大阪まで青春18きっぷで行くとだいたい9時間かかりますから、表定速度は60 km/hを超えるくらいです。

実はそんなに速くない在来線特急

新幹線が普通列車の4倍も5倍も速いのは仕方がありません。ですが、在来線の特急列車はどうなのでしょうか。

新幹線が通じていないところへは在来線特急で行くのが普通ですが、実はそんなに速いものではありません。

日本一速い特急列車でも表定速度は100 km/h行くか行かないかです。つまり、高速道路を運転していく場合と所要時間はあまり変わりません。

青春18きっぷを利用して普通列車で旅行する場合と比べても2倍の速度は行かないのです。

18きっぷでも乗れる速い列車

さらに朗報があります。青春18きっぷで乗れる列車の中には、在来線特急と遜色ないスピードで走る列車があります。

筆頭にあげられるのが「新快速」です。名古屋周辺と大阪周辺で走っているのでご存じの方も多いかと思いますが、関東圏などほかの地方の方には、なじみがないかもしれません。

新快速は青春18きっぷで乗れる列車としてはダントツに早いことで有名です。ちょっとした特急と同じ速度で走ります。

その他に岡山と高松を結ぶ快速「マリンライナー」や、静岡地区のホームライナーなどが速い列車としてあげられます。

全国的な傾向として、列車の速度は西高東低、つまり西日本のほうが速い傾向があります。

快速マリンライナー-高松駅

快速 マリンライナー

とはいえ、新快速を充分に利用した上で東京~大阪間9時間という数字になります。

乗り換えの多さ

青春18きっぷでの旅行速度を大幅に低下させる要因は、実は列車のスピードそのものではありません。

実際に乗ってみようと思って時刻を調べてみればわかりますが、乗り換えの回数が圧倒的に多くなります。例えば東京から大阪に行くにしたって、熱海、興津、浜松、豊橋、大垣、米原などと乗り換えがずらずら出てきます。

18きっぷを使って長距離移動しようとすると、だいたい2時間おきくらいに乗り換えが発生します。この乗り換えにかかる時間はダイヤのパターンによってまちまちです。途中でどのくらいの待ち時間が発生するかによって全体の所要時間が結構変わってきます。

東海道線の旅行であれば乗り継ぎの待ち時間は多くても1回30分以内に収まりますが、東北本線や山陽本線では最大1時間待ちという場合もあります。その他の路線ではさらに乗り継ぎが悪いこともざらです。

特急に乗る場合は基本的に途中乗り換えしないで目的地近くまで行くことができます。

特急と普通列車で大幅に所要時間が変わる場合は、だいたい乗り継ぎの時間ロスのせいです。

備後落合駅

芸備線 備後落合駅

どうして乗り換えが発生するのか

ではどうしてこんな面倒なことになるのでしょうか。

辛辣ですが結論を言ってしまうと、JRのダイヤは青春18きっぷ利用者のことは全く考えられていません。

そもそもJRのダイヤというのは1年に1回のダイヤ改正でダイヤが決まると、基本的に1年中毎日同じ時間に列車を走らせるようになっています。年に何週間もない青春18きっぷ利用期間の事を考えてダイヤを作ることはしません。さらに、青春18きっぷ期間だからといって、18きっぷ利用者に向けた列車を増発しても、JRは正当な対価をもらえません。

青春18きっぷを使って乗れる列車の大半は、通勤通学、日常の買い物などに使用されるものです。したがって、日常的な利用として想定される距離ごとに列車を走らせることになります。ほとんどの列車の運行範囲は生活圏の範囲に収まっているということです。

実際に乗ってみるとわかりますが、長距離乗っていると、周りの乗客が全員入れ替わっていることが結構あります。

それから、長距離列車が増えると、遠方の事故の影響を受けやすくなります。

例えば、東京から名古屋まで同じ列車が直通して走っていたとしましょう。もし静岡で事故でもあれば、東京でも名古屋でもダイヤ乱れが発生するわけです。そんなことがあれば通勤通学に使っている人からすればたまったものではありません。

こうしたことから、だいたい2時間走ったら乗り換え、というようになっているのです。

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計画の上ではうまくいっているけど

トランクを持って急ぐ人

事故の影響、という話で言えば、この乗換のせいで計画が台無しになることがよくあります。

基本的に乗り換えとなるところは、通しで乗る客が少ない所になっています。そのため、一方の列車が遅れたとしても、乗り継ぎ先の列車は待ってくれないのが普通です。これが、事故の影響を広範囲に広げないようにするJRの努力です。

重要な乗り継ぎポイントでは待ってくれることもありますが、初心者にその見極めは難しいので、乗り継ぎは遅れたらアウトだと思っておいたほうが安全です。

乗り継ぎ時間が1分とか3分とかのところは、一見待ち時間が少なくてありがたいように見えますが、ちょっとでも遅れたら乗り継げなくなるかもしれないという危険性をはらんでいます。

そのため、乗り継ぎは1箇所くらい失敗してもかまわないような、時間に余裕を持った行程を立てることが大切です。

長時間移動するときは一目散に目的地を目指してはいけない

運転頻度のちがい

時刻表-日和田駅

乗り継ぎの時間が長いこととも関連しますが、青春18きっぷの旅行をするにあたって、運転頻度を認識することも大変重要です。

乗り継ぎ時間が長い場合は、たいていその路線の運転間隔が広いことが原因です。ただ列車に乗っているだけであれば運転間隔を知るすべはありませんが、時刻表を見てみると、こんなにも運転間隔に差があるのかと驚かされます。

日本一の過密ダイヤの路線ではピーク時の運転間隔が2分を切ります。一方、日本一列車が少ないところでは1日1往復しか走らないなんていう区間もあります。

それは大げさにしても、東海道線のように10~15分おきに列車が走ってくるのを普通だと思わないほうが良いです。地方の幹線では1時間に1本が普通です。ローカル線では2時間に1本でもまだメジャーな方だと思います。

行程の検討を乗換案内アプリで済ませようとしている人は要注意です。

前後の列車間隔を把握しておかないと旅行中の急な行程変更もままなりません。うっかり乗り遅れたが最後、次の列車まで3時間待ち、なんていうことになりかねません。何があるかわからないので、だいたいの運転間隔を把握してから出かけることが大事です。本の時刻表を持っていると大変心強いです。

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18きっぷの需要と運転間隔が乖離かいりしているところもある

また、ダイヤは地元の利用客のためにあるという話を思い出していただきたいと思います。

列車の運転間隔というものは、利用者の数に左右されるものですが、ここで言う利用者というのは通勤通学に使う人のことです。青春18きっぷを使って長距離移動をするときは、しばしば通勤通学客のほとんどいないような区間を通らざるをえない場合があります。

そういったところでは普段はガラガラなのに、青春18きっぷのシーズンだけ客が押し寄せる、などという風景が繰り広げられます。地方では特に県境をまたぐ区間がそうなることが多いです。

基本的に地方では遠距離通勤や遠距離通学をする人はほとんどいないので、山奥の県境をまたぐ区間はガラガラのことが多いです。したがってそういったところでは列車の本数も少なく、18きっぷ利用者は苦労することになります。

こういったところのことを難所と呼んだりします。

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車内設備のちがい

新幹線や特急列車では回転式リクライニングシートが常識です。ところが、青春18きっぷで乗れる列車は基本的に通勤電車です。

青春18きっぷの旅行というのは、普段の生活で乗るような電車に何時間も乗り続ける事になります。

ところで、普通列車の車内設備というのは想像よりもバリエーションが豊かです。

特に東京などの東日本にお住まいの方は、ロングシートという形態の座席配置の電車しか見たことがないという方も多いのではないでしょうか。実は東京以外の大都市圏では、通勤電車の車内は転換クロスシートであることが常識です。

転換クロスシートというのは、座席の向きを進行方向に向けて変えられる座席です。大昔の新幹線と同じような座席が、いまでは通勤電車に装備されています。

普通列車の車内設備に関しても西高東低ということが言えます。

313系-車内

名古屋地区の転換クロスシート(313系)

いっぽうで、ローカル線の座席はなんとも言えません。一昔前ではボックスシートが並ぶ車内が一般的でしたが、最近ではロングシートを導入するローカル線もかなりあります。特に、東海地方、関東地方、東北地方でロングシートが広く導入されています。

青春18きっぷで長距離移動する時に乗るような列車にはたいていトイレが付いています。このあたりも、意外に感じる方がいるかもしれません。トイレに行きたいからと言ってうかうかと途中下車してしまうと、次の列車まで3時間待ち、なんていうことになりかねませんが、そういったリスクのある路線にはたいてい列車内にトイレがついているので安心です。

ロングシートの旅行は苦痛なのか

701系-車内

ロングシート=通勤路線という図式を思い浮かべる方は多いと思います。ところが最近では中距離電車にロングシートの車両が導入されている事例も多く、地方のローカル線でも結構メジャーです。

ロングシートだからと言って混んでいるとは限りません。むしろ、案外に空いているなと感じることのほうが多いです。

空いている場合はクロスシートよりもロングシートのほうが快適です。車内に邪魔な椅子がないので、自分が座っているのと反対方向の景色も楽しむことができます。

車内で飲食をするのは多少はばかられますが、あまりにガラガラな車内では問題に思いません。

車内で快適に過ごせるかどうかは、設備がどうであれ、混んでいるか空いているか、これにつきると思います。

そういうわけで、私はロングシートであっても大歓迎なのですが、ロングシートは疲れるとか、旅情がないという意見が結構聞かれます。感想は人それぞれあってかまわないと思いますから、自分に合わないと思ったら、新幹線でも高速バスでも、お好きなものを選べば良いと思います。

コンセントに苦労する

新幹線に乗れば車内にコンセントがあるのは常識となりました。その感覚でいると、青春18きっぷの旅は大変つらいものとなります。青春18きっぷで乗れる列車の車内でコンセントが使えることはありません。その上、1日中移動しっぱなしということにもなれば、電源の確保には大変苦労します。

なので、18きっぷで旅行するときは、自分で予備の電源を持って行きましょう。それでも、車内でスマートフォンなどをいじるのは極力やめたほうがいいと思います。SNS投稿や必要な連絡、情報の検索などは良いですが、暇つぶしの道具にしているとあっという間に充電がなくなり、あとで泣きを見ることになります。

飲食店などに入れば充電することもできますが、その分貴重な移動時間が削られてしまいます。

まとめ

青春18きっぷは格安に旅行ができるきっぷです。ただ、その格安一点にしかメリットを感じられないのであれば、あなたは青春18きっぷの旅行には向いていないと思います。

青春18きっぷの旅行は過酷です。ただ、乗り越えるのが楽しい苦痛だともいえます。

移動そのものに価値を置くというのではなく、困難を乗り越える創意工夫を楽しみとして、旅行に出かけましょう。

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